桃尻

 
「桃尻」という言葉は、一般に思われている意味とは違う、という話はしましたでしょうか?

(一般に思われている意味は何なのかという問題はありますが…)
 
 
小学館の日本国語大辞典(以下、「日国」)を引いてみますと

もも-じり【桃尻】
〔名〕(桃の果実の尻(実際は頭)がとがってすわりの悪いところから)
①馬に乗ることが下手で、尻が鞍くらに落ち着かないこと。また、そのような腰つき。
 (略)
 *徒然草(1331頃)一八八
  「馬など迎へにおこせたらんに、ももじりにて落ちなんは、心憂かるべし」
②(ーする)尻をもじもじさせ、座に落ち着かないこと。落ち着きなく体を動かすこと。
 (略)
③一つの場所、一つの仕事に落ち着いていることのできないこと。また、その人。


昔の本など読んでますと①の意味で「桃尻」を見ることが多いように思います。

馬に乗るのは圧倒的に男性だったことを考えると、「桃尻」とは男性についての表現だったということになります。

それが、時代が変わって馬に乗ることが極少なくなり、「桃尻」を馬関係で使うことが減って行き、日国は載せてませんが、逆に女性について使う表現になって行ったということでしょうか。

最近の用法も採り入れる三省堂国語辞典のほうを引いてみますと

もも じり[桃尻](名)
①〔馬に乗るのが へたで〕くら(鞍)に、しりが すわらないこと。
②しりがる。
「ー娘」
③〔俗〕形のよい しり。


「②しりがる」という意味は日国の③の意味につながるものでしょう。三省堂が特徴的なのは「③〔俗〕形のよい しり」ですが、これには少し問題があるように思います。おそらく男性には使いませんし、若さも表していますし、また、色にも限定があると思われるからです。したがって、「③〔俗〕白桃色で形のよい 若い女性のしり」と説明するのがよいと思われます。辞書の説明としては生々しくなりますが。。

この③の意味は、1977年の橋本治のデビュー作『桃尻娘』あたりから使われたものだと、傍証なしに断定してみようと思ふ。

ただ気になるのは、この意味の「桃尻」の桃とは、実を指すのか花を指すのか、ということです。

というのも、『桃尻娘』を原作とした1978年公開の映画作品のタイトルが、『ピンクヒップガール 桃尻娘』となっているからです。

 ピンクヒップガール 桃尻娘 [DVD] (Amazon.co.jpにリンク)

ピーチではなくピンク。つまり、『桃尻娘』の「桃」とは、桃の花のほうを指していることになります。

ただこれは、いわゆるピンク映画なのでピンクと言っているだけかもしれません。原作の『桃尻娘』の「桃」は実のほうを指しているのかもしれない。(読んでないからわからない)

ちなみに、橋本治の『桃尻娘』は女子高校生のモノローグだそうで、もしかすると、太宰治の『女生徒』に着想を得たものかもしれない。『女生徒』は好きな作品です。(ピンクものではありません)

 女生徒 (Kindle)

「桃尻」に戻りますが、三省堂が「③〔俗〕形のよい しり」と挙げているように、現代的な「桃尻」の「桃」も桃の実のほうを指していると考えてよいでしょう。(「桃の花のような形の しり」は意味をなさないので)

最後に。桃尻桃尻と言ってますが、桃の果実の先は「頭」なんですね。さすが日国、冷静な指摘でした。


※追記(6月1日)

 上に挙げました『ピンクヒップガール 桃尻娘』の第3弾のブルーレイが、なんと明日発売です。

 桃尻娘 プロポーズ大作戦 [Blu-ray]

 ご参考まで。
 

コメント

たかぽん、こんばんは。お久しぶりです。

>「桃尻」という言葉は、一般に思われている意味とは違う、という話はしましたでしょうか?

はい、私とここで以前コメントのやり取りをしていてそんな話を聞いた覚えがあります。

http://dandelion3939.blog38.fc2.com/?m2=res&no=3211&sp=1&page=3

同じ辞書でも日国と三省堂の違いがなんか面白いですね。

>「②しりがる」という意味は日国の③の意味につながるものでしょう。

なるほど、ひとつところに落ち着かない、からしりがる、のイメージになるんですかね。

>三省堂が特徴的なのは「③〔俗〕形のよい しり」ですが、これには少し問題があるように思います。おそらく男性には使いませんし、若さも表していますし、また、色にも限定があると思われるからです。したがって、「③〔俗〕白桃色で形のよい 若い女性のしり」と説明するのがよいと思われます。辞書の説明としては生々しくなりますが。。

まあ確かに、小学生も読むと思うとちょっと考えちゃいますね。

>この③の意味は、1977年の橋本治のデビュー作『桃尻娘』あたりから使われたものだと、傍証なしに断定してみようと思ふ。

>ただ気になるのは、この意味の「桃尻」の桃とは、実を指すのか花を指すのか、ということです。

>というのも、『桃尻娘』を原作とした1978年公開の映画作品のタイトルが、『ピンクヒップガール 桃尻娘』となっているからです。

なるほど、英語版ではピンクヒップガールと表現されているのですね。

>ピーチではなくピンク。つまり、『桃尻娘』の「桃」とは、桃の花のほうを指していることになります。

そうですね、色の名前でいうと、ピンクが「桃色」と言いますよね。ピーチという色もあって、桃色にやや黄色味が入った色だったと思うんですよね(黄桃の色かな?)。だから色っぽい女性のイメージからはちょっと外れるのかも。(どっちかというと少女っぽいかも)

色白でほんのり紅を差したような血色のいい感じ、というイメージならやっぱりピンクなんだろうなぁ。

余談ですが、今田美奈子さんの「おかしなお菓子」という本では、日本語にすると変わった名前のお菓子ばかり紹介してますが(外国には意外とたくさんあります)、その中に「おしり」という名前のパンが出てきます。
いわゆるハイジの憧れた白パンのような、表面に粉をふった柔らかい感じのパンですが、真ん中に切り込みを入れて焼いた、まさに赤ちゃんのおしりのような形のパンです。
スイスかどこかの製菓学校のカリキュラムにも載っている、由緒正しきお菓子のようですが、今田さんの解説には「朝目覚めたばかりの食卓でおしりパンと出合うのもなんなので、午後のティータイムに友達とおしゃべりしながら食べるのがいいでしょう」とか「生地をきれいに丸めなければニキビのおしりになってしまいます」とか書いてあってちょっと笑いました。

桃の実の形も、真ん中に線が入ってちょっとへこんでいるところがおしりの形に似ているとイメージしたんだろうなぁ。

How silly of me!

まーりん、こんばんは。おひさしぶりです。

>>「桃尻」という言葉は、一般に思われている意味とは違う、という話はしましたでしょうか?
> はい、私とここで以前コメントのやり取りをしていてそんな話を聞いた覚えがあります。
> http://dandelion3939.blog38.fc2.com/?m2=res&no=3211&sp=1&page=3

おお! どこかで話したような気がするな〜…とは思ってたんです。
まーりんさんとでしたか。これはしたり。How silly of me!

> 同じ辞書でも日国と三省堂の違いがなんか面白いですね。

そうなんですよ。三省堂国語辞典は、伝統的な用法ではないやつも、わりと積極的に採り入れています。

>>「②しりがる」という意味は日国の③の意味につながるものでしょう。
> なるほど、ひとつところに落ち着かない、からしりがる、のイメージになるんですかね。

そうでしょうね。逆さに向けたら落ち着くのに。

>>三省堂が特徴的なのは「③〔俗〕形のよい しり」ですが、これには少し問題があるように思います。おそらく男性には使いませんし、若さも表していますし、また、色にも限定があると思われるからです。したがって、「③〔俗〕白桃色で形のよい 若い女性のしり」と説明するのがよいと思われます。辞書の説明としては生々しくなりますが。。
> まあ確かに、小学生も読むと思うとちょっと考えちゃいますね。

でも男の子はこういうの見つけてドキドキしたいんですよ。。
こどもに辞書を引く習慣をつけるために、辞書編纂者にはぜひご一考いただきたい。

>> この③の意味は、1977年の橋本治のデビュー作『桃尻娘』あたりから使われたものだと、傍証なしに断定してみようと思ふ。
>> ただ気になるのは、この意味の「桃尻」の桃とは、実を指すのか花を指すのか、ということです。
>> というのも、『桃尻娘』を原作とした1978年公開の映画作品のタイトルが、『ピンクヒップガール 桃尻娘』となっているからです。
> なるほど、英語版ではピンクヒップガールと表現されているのですね。

なんと邦題自体が『ピンクヒップガール 桃尻娘』なのです。
おそらく『桃尻娘』ではポップな感じがしないからではないかと思います。時代劇に間違われるおそれすらある。
続編からは「ピンクヒップガール」が外れております。(なんと2作目、3作目がありました。テレビドラマ化までされました。)

>> ピーチではなくピンク。つまり、『桃尻娘』の「桃」とは、桃の花のほうを指していることになります。
> そうですね、色の名前でいうと、ピンクが「桃色」と言いますよね。ピーチという色もあって、桃色にやや黄色味が入った色だったと思うんですよね(黄桃の色かな?)。だから色っぽい女性のイメージからはちょっと外れるのかも。(どっちかというと少女っぽいかも)
>
> 色白でほんのり紅を差したような血色のいい感じ、というイメージならやっぱりピンクなんだろうなぁ。

ピンク映画という言葉もあるように、昔はピンクがエッチなイメージだったと思うんですが、近年はピンクをエッチと結びつけるのは、ちょっと古い感じがするのかもしれません。いわゆる大人なビデオの普及などにより、エッチのイメージが、情緒的なピンクから、女性の肌の白さそのものへと変化したのではなかろうか。恋とか何とかを捨象した、ドライな、ある意味 即物的なものになった。なので「桃尻娘」も、桃=花の色(ピンク)を指していたのが、桃=実の形と色(白っぽい)を指すように変わってきたのかもしれない。(なんかいっぱしのエッチ評論家のような…)

> 余談ですが、今田美奈子さんの「おかしなお菓子」という本では、日本語にすると変わった名前のお菓子ばかり紹介してますが(外国には意外とたくさんあります)、その中に「おしり」という名前のパンが出てきます。

ほほう。

> いわゆるハイジの憧れた白パンのような、表面に粉をふった柔らかい感じのパンですが、真ん中に切り込みを入れて焼いた、まさに赤ちゃんのおしりのような形のパンです。

そういうパン、近所で売ってます。あれは「おしり」なのか。。

> スイスかどこかの製菓学校のカリキュラムにも載っている、由緒正しきお菓子のようですが、

由緒正しき「おしり」。。

> 今田さんの解説には「朝目覚めたばかりの食卓でおしりパンと出合うのもなんなので、午後のティータイムに友達とおしゃべりしながら食べるのがいいでしょう」とか

どの時間帯でも違和感あるような気がしますが。。

> 「生地をきれいに丸めなければニキビのおしりになってしまいます」とか書いてあってちょっと笑いました。

ニキビのおしりって言うなー!

> 桃の実の形も、真ん中に線が入ってちょっとへこんでいるところがおしりの形に似ているとイメージしたんだろうなぁ。

もう、おしりにしか見えませんよね。

コメントの投稿