『聖徳太子』東野治之

 
面白かったです。

聖徳太子――ほんとうの姿を求めて (岩波ジュニア新書)  (Amazon.co.jpにリンク)

先日、著者の東野治之先生の文化功労者選出記念の講演会というのが奈良大学でありまして、聴きに行ったところ面白かったので、御本も読んでみようかなと思った次第。

聖徳太子については、子供のころに読んだ学研まんがの知識で止まっていましたので、イメージを一新される数々の事実に驚かされました。

私の考えていた聖徳太子像は、

・推古天皇の摂政として、蘇我氏の専横を抑え、皇室中心の政治を主導した。
・小野妹子を遣隋使として派遣した。
・「日出ずる処」「日没する処」と国書に書き、隋の煬帝を怒らせた。
・前提として、崇仏の蘇我氏と排仏の物部氏が戦った。

というものでしたが、すべて覆されました。

たとえば、

かつては、太子が皇室とこれを脅かす蘇我氏の間に立って、蘇我氏を牽制し、融和をはかるために作ったのが十七条憲法だと言われたこともありましたが、太子と馬子の共同作業が現実であってみれば、それは当たりません。(p.83)


なんと。聖徳太子と蘇我馬子が共同で作った?

これら(の聖徳太子伝)の中では、太子は小野妹子を遣隋使として派遣した、その当事者になっています。しかしこれは明らかに史実ではありません。(p.92)


聖徳太子が小野妹子を派遣したのではない?

なお、『隋書』ではこの国書を見た隋の煬帝が、こんな無礼な国書は取り次ぐな、と怒ったと言います。今もまちがった解釈をよく見かけるので付け加えますが、その理由が『日出ずる処』『日没する処』という表現にあったのだというのは俗説です。(p.94)


えっ。「日没する処」と書かれて気分を害したと習ったけど?

実際には、物部氏の拠点、河内(大阪府)の渋川にも飛鳥時代の寺院跡が見つかっていて、物部氏も仏教信仰を持っていた可能性を否定できません。崇仏・排仏の闘争がどこまで事実なのか、そのあたりは不明というほかないでしょう。(p.99)


物部氏が仏教を信仰してただぁ?

ふつう私たちが使っている「推古」という名は、奈良時代の末に歴代天皇にまとめて付けられた中国風の諡号の一つです。(p.109)


これは単純に知りませんでした。じゃあ推古天皇は、ご存命中はもちろんのこと、亡くなられてからも100年以上、「推古天皇」とは呼ばれていなかったってことですね。

したがって本書では、太子の役どころは、中国の学問や仏教に対する持ち前の深い造詣をもって、蘇我馬子の主導する政治や外交に、政策を提言し裏付けを与えることにあったと考えました。(p.209)


蘇我馬子が政治や外交を主導し、聖徳太子はアドバイザーみたいなもの。イメージちがうなぁ・・・

そういえば、聖徳太子は「ミコノミコト」という立場であったようですが、これは「エコノミスト」に見えなくもない。(無理やりやな)

読んでいなければ古代史を大きく誤解したままだった、と思える本でした。

学者の厳密さの一端に触れることのできる本でもあります。説明がややくどかったりしますが、これが学者なんですね。

この本で知ったことを踏まえて、法隆寺にも行ってみようかと思います。
 
 

コメント

No title

歴史探偵の気分になれるウェブ小説を知ってますか。 グーグルやスマホで「北円堂の秘密」とネット検索するとヒットし、小一時間で読めます。北円堂は古都奈良・興福寺の八角円堂です。 その1からラストまで無料です。夢殿と同じ八角形の北円堂を知らない人が多いですね。順に読めば歴史の扉が開き感動に包まれます。重複、 既読ならご免なさい。お仕事のリフレッシュや脳トレにも最適です。物語が観光地に絡むと興味が倍増します。平城京遷都を主導した聖武天皇の外祖父が登場します。古代の政治家の小説です。気が向いたらお読み下さいませ。(奈良のはじまりの歴史は面白いです。日本史の要ですね。)

Re: No title

omachiさん、こんばんは。

> 歴史探偵の気分になれるウェブ小説を知ってますか。 グーグルやスマホで「北円堂の秘密」とネット検索するとヒットし、小一時間で読めます。

知りませんでした。ちょっと見てみました。面白そうですね^^

> 北円堂は古都奈良・興福寺の八角円堂です。 その1からラストまで無料です。夢殿と同じ八角形の北円堂を知らない人が多いですね。

南円堂は知っていましたが、なぜか北円堂は知りませんでした。。こんど奈良に行ったら見に行こう。

> 順に読めば歴史の扉が開き感動に包まれます。

へええ〜

> 重複、 既読ならご免なさい。

いえ、大丈夫です。知りませんでしたので^^

> お仕事のリフレッシュや脳トレにも最適です。物語が観光地に絡むと興味が倍増します。平城京遷都を主導した聖武天皇の外祖父が登場します。

もしや・・・ あの方でしょうか?
そういえば先日、平城宮跡をまわって、法華寺を見てきました。

> 古代の政治家の小説です。気が向いたらお読み下さいませ。(奈良のはじまりの歴史は面白いです。日本史の要ですね。)

そうですね。実は中学が奈良で、平城宮跡で鬼ごっこをしたりと、奈良ではよく遊んでいたのですが、すごい歴史がある土地だったのだと、今さらながら認識を改めております。奈良にいる間にもっと学んでおけばよかった・・・(いや、never too late!)
面白いのを教えていただきありがとうございました!

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